自宅から銃砲刀剣類が出てきた時の対処

このエントリは GMO Pepabo Managers Advent Calendar 2019 11日目のエントリです。昨日は吉野聡さんによる 商品を選択する時の話でした。

今年わたしの身に起きた「めちゃくちゃ大変なわけでもないが、想像だにしてなかったこと」に対処した話をします。

発生トリガー:実家との別れ

今年、私は生家に別れを告げました。25歳までずっと住んでいました。

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福岡市某所にあった実家(現在は所有者が異なるためぼかしています)

実家は薬局を営んでいて、幼いころは店内を遊び場とみなして走り回り、近所のお得意様や問屋の営業の人に遊んでもらったりしていました。 タンス、化粧棚、家具家電、など普通の家財道具だけでなく、ガラス棚やリポビタンDの冷蔵庫など特殊なものもあったので、どう片付けたものか、、と思っていましたが業者さんにお願いすると2〜3時間で家の中からっぽにしてくれました。プロの仕事はマジですごい。

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店内跡。幼少時、鉄製の柱に上り天井にたどりつくタイムアタックに全てをかけていた。
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幼少時、この戸棚にとんでもないものが入っていると妄想し興奮していた。
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店舗スペースと直結した居間。個人商店ってこういう感じですよね。
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居間での1枚。The Clashが名盤ロンドンコーリングを発表した1979年頃のわし。(中央)

夏休みや正月には親戚も集まり、また商店街だったこともあり比較的賑やかな環境だったな。など思い出し空になった家を眺めて少し感傷的な気持ちになりました。ただこの時点では厳密に言うと完全に空っぽになったわけではなく、仏壇が残されてる状態でした。

仏壇って普通に回収はしてもらえないんですね。仏壇屋さんを通じて専門業者を手配して、後日回収することになっていました。

これは何?

仏壇回収当日を迎え「ああ、やっとこれで全て完了だ。。」とある種の達成感を感じていました。もの寂しい気持ちがない訳では無かったですが、それ以上にやっと開放されるという気持ちが強かったんです。経験したことある方はわかると思いますが、とにかく大変なんですよ、、買い主が見つかるまでも大変だし、見つかったら見つかったで引渡し日がタイトな中、あらゆるインフラの停止。必要なものの判定、搬出。片付け業者選定、そして仏壇(実家って大抵ありますよね)の買い替えなどなど。。余談ですがお仏壇のはせがわさんで買い換えたら、親切丁寧な対応のうえ、Tポイントがついたのでおすすめです。

さて、回収業者さん(ヤマトさんの専門チームだった)も来て、手際よく作業を進められているのを眺めていました。さぁ仏壇を動かすぞ、となり抱えるとなかなか出てこない。

「あれ、なんか引っかかってますね。。せーの、エイッ!、ゴトン!!」

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仏壇の上から姿を現した刀

「あっ、これが引っかかってたんですね〜」って

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!」ですよ!

何これ、いつから?いやじいちゃん?満州から持ってきてたの??護身用?? 強盗でもきたら斬り殺す気だったの??

などの疑問が色々頭に浮かびましたが、とにかく「まだ終わらないのかよ!!!」という脱力感がすごかったです。ヘナ〜って座り込んだんじゃないですかね。

埃のかぶり方から父が知っていたとは思えず、30〜40年くらいはここに人知れずあったのではなかろうか。。

ひとまず仏壇回収そのものは無事終えて、刀を車に積んで生活している家に戻りました。 が、ここでまず1つ間違っていたんですね。

#1. 登録証がない場合は最寄りの警察署へ連絡すること

帰って改めて確認したんですが、どう見ても刀です。

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気のせいかもだが使用感のある柄(後ろは姉の残したあすなろ白書柴門ふみ先生の名作)

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刀身(あと「九龍で会いましょう」とか「非婚家族」とかも名作ですよね。)

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光に当てると研いだ跡も見受けられた。

ネットでちょっと調べて警察に連絡しました。

「実家から日本刀出てきたのでお持ちしようと思うんですが。」

「登録証が無ければもってきてはだめです。こちらから伺います。銃刀法違反となる可能性があります。」

「まず発見場所を確認させてもらい、その後本当に真剣か確認させていただき、発見届を発行します。」

なるほど、、、実家から持ち出してもいけなかったということなんです。 実際、警察の方にお会いするときは

  1. 実家で合流。「ここで見つかった」という確認を行う。
  2. そのあと家で実物を確認してもらう。

という手順になりました。私の実家は車で15分位の距離だったのでよかったですが 県外とかだったら結構な手間になるところでした。

ここでのポイント

・銃砲刀剣類を発見したら警察に連絡すること
・発見場所から動かさないこと

#2. 「発見届出済証」を発行してもらうこと

県警の方に来ていただき、自宅にきて鑑定してもらうことになりました。 手際よく刀を解体していきます。プロの仕事はマジですごい。

「これは刀身の長さから言って脇差ですね」

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手際よく解体された刀剣類こと脇差

「あ〜銘がありますね、真剣で間違いないですし文化財の可能性はあります。」

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全然なんて書いてあるかわからないけど銘が入ってる

「発見届出済証を発行しますね。」

「所有し続けるためには県庁の文化財保護課で行われる審査会に参加し、文化財と認定され登録証をもらうことが必要になります。」

「ただ、認定されるかどうかはわからないので、必要なければ処分をおすすめします。」

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届出したことを証明する書式。銘は備前國長なんとか(見たこと無い漢字...)

処分するか審査会に出すか決めて改めて出頭してください、とのことだった。

後日警察に出頭し、審査会に出したい旨を伝えて手続きをしてもらった。 ここまで来たらこの脇差がどこから来たのか、自分の家とどう関わりがあるのか、可能な範囲で知りたいと思ったからです。 (※ このエントリを書いてる段階ではまだわかっていません。)

「本当はね、審査会も出さずに処分することを勧めてはいるんですよ。」

「なぜですか?」

「登録証を無くすことが多いんですよ。で、こうやって後の人たちが困るでしょう?」

このことばには納得感がありました。確かに困る。

ここでのポイント

・発見届出済証の発行により、一時的な保有が認められるということ
・登録証がないと継続して保有できないということ
・また、そのためには文化財として認められないといけないということ

#3. 自治体の文化財保護課からの連絡を待ち、審査要件を確認すること

後日県庁より連絡がありました。警察に届けて3週間後くらいですかね。

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県庁からの通知。(刀剣担当)ってあるんですね。

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注意事項、部分的な研磨を「窓あけ」と言うそうです。爽やかですね。

ここでのポイント

・届出から審査会への招集までは少し期間があくこと
・外国製、改造、日本刀としての工程ではない、など登録条件が明確にあること

#4. 銃砲刀剣類登録審査会に出席すること

審査会当日がやってきました。

「運搬する際には覆いかぶせるか、容器に入れるなどして危険のないように注意してください」と案内にありました。 ひとまず持っている一番大きいバッグに入れてみました。

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見ようによってはワンちゃんが顔だしてるみたいでかわいいですが、これ完全にアウトですよね。

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これもアウトな気がするが、、、これ以上は面倒なんでこのままバスに乗りました。

県庁に到着して、指定の地下会議室に向かいます。地下なのって銃の暴発対策とかですかね。

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峠の茶屋のような会場案内。あと「3号会議室」って主張が強い。

申請書類3部と番号札をとって着座して待ちます。この部屋は待合室で審査は隣の部屋で行われるようです。自分の順番がくるまで待ちます。 先に3種類の書類を準備します。「登録申請書」「審査申込書」「領収書紙納付書」です。 審査手数料6,300円、と案内にあったので審査そのものに費用がかかると思い、先に領収証紙を購入したのですが、どうやら審査の結果「登録可」となってからの手数料支払いでよかったようです。

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申請書類たち

この待合室が、独特の緊張感でした。みんな着座して長机の上に、その「審査対象物」を置いてるわけなんです。もちろん覆い被せているんですが、もうなんとなく形でわかりますよね。銃やら刀やら。で、みんな基本黙っているんですけど、常連みたいな顔見知り同士がお話されてて「今日は長モノがきとらんみたいやね〜」とか言ってます。長モノってなんですかね。薙刀とか? もう周りが気になって仕方なかったですね。

で、待っているうちに係員の方が審査対象を回収に来られます。お預けして審査完了するまで待ちます。 順番が来て呼ばれて「文化財として登録できます」という審査結果を受け、無事認定されました。 なお、所有者変更を行う際は別途申請が必要とのことでした。

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登録証。その場でラミネート加工された。

ここでのポイント

・領収証紙は審査完了してから購入すること
・「それなんですか??」とか他の人に話しかけたい興奮を抑えること
・この登録証を無くさないこと(最も重要)

審査・登録を終えて

審査会を終えて登録証を無事得ることができました。とはいえこれでようやく誰かに依頼するなど、調べることできる状態になった、つまりスタートラインなわけです。2020年のうちにこれが何なのか、ゆっくり確認していきたいと思います。

今回の件、正直に言うと自身のルーツを何か知ることができるかもしれない、というプラスのモチベーションで行動していました。が、前述の警察の方がお話されていた「後の人が困るでしょう?」ということばが一連の過程の中で一番印象に残っています。

祖父も、父も(おそらく知らなかったと思う)無責任に残すつもりは無かったでしょう。でも結果としては何の引き継ぎもなく私は知ることとなり、ゼロベースで問題に対処する必要があった訳です。

「意図せずに後人を困らせることがある」

ビジネスのみならず生活においても「後からわかる状態にする」ことの大切さを実感できたようにも思う出来事でした。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。「その銘知ってる!」って方いましたら連絡ください。 明日は中途同期入社 Yamarin Akane さんのお話です。おたのしみに!